2024年次に来る漫画大賞WEB漫画部門1位、ふつうの軽音部。
連載当初から楽しく読ませてもらっていて「これは速やかに感想を言語化したい!!書きたい!!」と思った。しかし、上手くまとまらなかったり、引っ越しやらなんやらその後の生活やらでバタバタしてしまったものでズルズルと後回ししてしまい現在に至る…。(本当は次にくるマンガ大賞の結果発表前に書ければ良かったのだけど…)
でも、大賞の結果が発表されて「このままでは永遠に先延ばしにしてしまう…!!」という危機感から一気に記事を仕上げにかかった。この行動力がもっと早くから出ていれば…。
そんなこんなで学園音楽青春群像劇の「ふつうの軽音部」を紹介します。
※ここからは作中の展開にやんわり触れたりするので一切それらを目に入れたくない人はブラウザバックを
陰キャだけど主人公メンタル
本作の主人公は鳩野ちひろという15歳の少女だ。andymoriやフジファブリックといった少し渋めの邦ロックが好き。自意識過剰でネガティブ(自称)でクラスでは目立たない陰キャというポジションにあたる。そんな彼女を主人公足らしめている要素って「切り替えができること」だと思う。
鳩野は劇中で出会った人物や出来事についてツッコミを入れたり、ネガティブな思考を巡らせることが多い。本人もそのネガティブさを自負している。しかし、そこから肯定的な評価を見出して考え方を改めることもよくある。
劇中序盤で言えば、軽音部の新歓ライブのシーンがそうだった。新入生そっちのけで盛り上がる在校生たちを見て共感性羞恥を感じていたし、なんなら「この軽音部入って大丈夫か…?」まで思っていた。しかし、ボーカルの歌いっぷりを見ていて「あんなふうに思いっきり歌えたら楽しいだろうな」と捉え方が変わり、改めて軽音部への入部を決意している。
当の本人はネガティブを自称しているし、実際にそれと過剰な自意識が働いて考えすぎたり思い悩む場面も多い。でも、それが作品のコメディ要素や読者への共感という形で機能している。さらに、そこから考えを切り替えられる場面も多々あるので結果的に主人公らしいとっつきやすさと強メンタルに起因しているようだ。
暗躍するやべえやつ、蚊帳の外の主人公
主人公の紹介をした後にこんなことを言うのも何だけども。本作の序盤は主人公が蚊帳の外になっている面も見られる。(実際そういった感想も見かけるしコミックスの帯とかにも書かれている)
作中キャラが増えてたり、主人公以外に人気のキャラが生まれたりすると「主人公が空気」とか「主人公が全然出ない」と言われることがある作品もある。これは基本的にはマイナスの評価であることがほとんどだ。ストーリーのメインとなる主人公に存在意義が無い、もしくは薄くなっているように感じることを揶揄するような言葉。
しかし、本作のそれは性質が異なると感じた。
この作品を「主人公が蚊帳の外」と印象付けた原因はあるキャラの謀略だ。
そのキャラとは幸山厘のことだ。
彼女はある理由で鳩野がボーカルのバンドを結成しようと暗躍する。そのために軽音部の人間関係を巧みに利用して操り、バンドメンバー候補が既存のバンドから離れるように仕向けたりする。この暗躍に関しては主人公は全く関与しておらず、主人公の知らないところで物語が進行している様子が「主人公が蚊帳の外」と表現されているのだろう。
では、それが上記の揶揄とはどう違うのか。ちゃんと暗躍以外で主人公が活きているからだ。
幸山の暗躍中にも鳩野はギターやボーカルの練習に励んだり、友達を慰めたりと主人公らしいムーブをしっかりとかましているのだ。かなり大まかに分けると「主人公の精神的成長と活躍」とバンド結成や運用に向けての暗躍が別ルートで同時進行で進んでいる感じ。まさに群像劇といえる構成。
また、確かにバンド結成や運用のための暗躍やその経緯については”蚊帳の外”な面もあるが、核心というか最終的な決め手として鳩野が関わることは多い。バンドメンバーは全員鳩野の歌を聴いてバンドの結成や加入を決意している。結果的に「コイツならなんとかしてくれる…!!」という期待感が高まっていく。
結末が気になる暗躍。もっと見たいと思わせてくれる主人公陣。そりゃ続きが読みたくなるって話ですわ!!
覆るキャラ評価
本作、学園を舞台にした群像劇ということもあって登場キャラも多い。嫌なやつだったり背景が読めないやつも出てくる。でもそういったキャラはことごとく評価が変わってくる。「憎めない」というか「そういう一面があったのか」と思い知らされる。
単なる「一軍陽キャ」だと思っていた桃ちゃんが実は友人関係でコンプレックスを抱えていたり、
口が悪く人を見下した態度の彩目ちゃんは虚勢を張っているだけで実は可哀想な境遇にあったりと、
後々、人物像や背景が見えてくる。そして事前に伏線(?)を貼ってくれているというか、事前の描写と噛み合うようになっているからスッと頭に入る。後々、読み返したくなるのだ。
この事前に置いておいた描写が後に活かされたり、後にキャラの評価が変わっていく感じはワールドトリガーに近いものを感じた。読んでいくほど深みが増していくし、前の話も頻繁に読み返して確認したくなる。多分どちらか好きな人はもう片方も好きってやつ。
おかげでまだ3巻までしか発売していないけど既に何回も1巻から読み返しているし、最新話周辺も何度も読み返す。
もうすぐ3巻発売予定!
そんなふつうの軽音部も9/4(水)に最新3巻が発売した。
次にくるマンガ大賞1位を祝してマンガアプリ「ジャンプ+」では10話まで、広告を見れば実質最新話まで無料で読めるので是非とも読んでみてほしい。
コメント